真英計測

絶対重力測定とは

地球の重力値を絶対値で測定する事を重力の絶対測定と言い、測定する装置を絶対重力計
と言います。
地球の重力は、地球の引力によって物体が地球中心に向かって引きつけられる力です。
もう少し正確に書くと、地球は自転しているので、引力の他に遠心力を感じるので、
この2つの力の合力が重力ということになります。
自分の体重を感じるのも重力があるからです。重力を測定するには、地球が物体を引き寄せる力
を計れば良いわけです。
例えば決まった質量をぶら下げたバネ秤で、バネの長さを測れば、その長さは測った場所の
重力値に比例してはずです。 つまり、長さから重力の大きさが分かるはずです。
ただ、バネは時間が経つにつれて、特性が変わるので、測定間隔が長くなると、正確な重力値が
求められなくなります。
求まる重力値自体も、きちんと分かった地点で測定して、その値を基準にして移動した地点での
未知の測定点での測定値の差から、値付けすることになります。
このように、重力基準点を元に測定点の重力値を決める測定法を、重力の相対測定と言います。
現在、重力測定と言うと、この相対測定を指すことが一般的です。
石油やウラン鉱などの資源探査では、スプリング型の相対重力計が多く使われています。

これに対して、重力の基準点からの差を求めることなく、任意の測定地点の重力値を独立に
求める測定を、重力の絶対測定と言います。そして、このための測定装置の事を、絶対重力計
と言います。 つまり、重力値を単独で求めるのが絶対重力計です。
絶対重力計を使えば、その場で重力値が求められるという訳で、基準重力点から遠く離れた、
例えば島とか南極大陸などで重力値を求めようとする際には、絶対重力計が欠かせません。
絶対重力計では、バネ秤の原理で重さを求める方法は使いません。重さのその代わり、
物体の自由落下から重力加速度を測定します。
高校の物理で習った、物体の自由落下の公式を使って、落下距離と落下時間の関係から、
加速度成分を求めます。
空気中で物を落とすと、空気抵抗があるため、自由落下距離が正確に測れませんので、
真空中で測定します。
長さと時間の標準量を元に、落下距離と落下時間の関係を求めて、重力加速度を計算から
求めるのが、絶対重力測定の基本原理です。
長さの基準は、メートル原器になるレーザ光の波長を使います。
時間の基準は、GPS衛星にも搭載されているような原子時計(ルビジウム時計)の基準周波数
を利用します。
具体的に言うと、レーザ干渉計を組み立てて、干渉計を構成する光学素子(例えばコーナ
キューブプリズム)の一つを真空中で自由落下させ、干渉計から発生する干渉縞の明暗を、
フォトデテクターで電気的に検出することで落下距離を測定します。
干渉縞の一回の明暗が、レーザ光源の半波長の長さに相当します。
干渉縞信号から光学素子の落下距離が分かり、この信号を原子時計信号で処理することで、
落下距離と落下時間の対応付けができます。
このように数多くの対応付けデータを求めることで、重力加速度の絶対値を計算できます。
 
真英計測では、東京大学地震研究所の新谷先生と一緒に、小型の絶対重力計を開発しております。
真英計測が落下装置と真空装置を担当し、新谷先生がレーザ干渉計とデータ処理装置を
担当しています。
詳しい内容は、月刊地球367号(Vol.32, No.4, 2010)をご覧下さい。
重力の絶対測定は、長さと時間の標準量を使う精密計測で、基本原理は簡単でありながら、
結構、中身が濃いものです。物理実験に興味があれば、試してみる価値はあると思います。
自由落下による重力測定を挑戦したい方は、まず、空気中でトライしてみては如何でしょうか。
振り子で重力を求める実験より面白いかもしれません。実験のお手伝いをさせて頂きます。

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